剱、北方稜線 縦走 ブナクラ峠から本峰早月尾根 2012年8月31日〜9月2日 地図
この夏の宿題?をようやく終えました。夏休みを前、後に分けてとり前半、中央アルプス縦走、後半、剱岳、北方稜線縦走。
剱岳、北方稜線は以前 室堂、立山、剱から池の平小屋まで歩いているのですが、北方稜線は更に北があることを知りました.
しかしそこは非常に険しく、勿論道もなくわずかに残雪期に一部のクライマーが登るようなところだと聞いていました。ところが、
”新ハイキングクラブ”の本の紀行文に、夏に登った記事が載っていました。新ハイですよ!?困難な岩場は2箇所だけ、とありました。
急に興味が湧き出しネット等を漁りました。無雪期もそれなりに歩かれているようです。更に入念に調べ、はじめ職場の友人に話を
持ちかけましたが、日程が合わず、単独でも行けないかと考えました。ザイルなど少しギヤも必要で、
かなり重くなり、やはり無理かとあきらめ気味でしたが、一度火の着いた気持ちは治まりません。
他にいろいろ事情があったのですが、日程を一日ずらして決行です。
どうせザイルを持っていくのだからツエルトにするか設営の楽なテントにするか迷いましたがテントにしました。
これで荷は少し重くなりました。甲府から松本、安房トンネルを抜け富山、上市、夜明け前に馬場島到着。
しかしブナクラ谷入り口への駐車場まで入れません。
馬場島のすぐ先でゲートがありここに車留めて重いザックを背負って歩き出します。登山口の取水堤がなんとなく以前猫叉山
へ行った時と違っています。しかもすぐにやや高巻気味になる。大分ルートが変わったのだろうか?赤ペンキマークはしっかりある。
そのうち渡渉箇所も??更に対岸の尾根の方に向かって登りだす。池ノ谷なる石柱があらわれる。やっぱり、こちらではない。
叉流れに戻り右岸に取り付き、なかばヤブコギで登っていくが、どうも変だ。もっとしっかりとした道があったはずだ。
稜線のほうに見えるはずの赤谷山も見えない。どうも谷を一つ間違えたようだ。まだ時間は早い戻ることにしよう。
叉苦労して入山口に着く。更に林道を下ると、橋の手前にまっすぐに行く道があるここで間違えたのだ。
9時半、4時間のロスタイム。どうしようか?一瞬このまま帰ってしまおうかと弱気な気持ちになる。
いやいやもう次にこんなチャンスがいつ来るかわからない。来年では体力も衰えるだろうし・・
思い直し、今夜の泊まり場の予定を白萩山の先のコルでなく赤谷山にしよう。
今からでも何とか間に合うだろうとブナクラ谷右岸沿いの道を登っていく。ブナクラ峠が遠くに感じられる。
途中流れを横切る所で、水を2リットル追加したので叉重たくなる。1時頃ようやくブナクラ峠に着く。
ここで藪の刈り払いをしている夫婦に出会いいろいろと話を聞く。少し疲れも取れ赤谷山を目指す。
後方を振り返ると猫叉山への急な斜面が見える。以前はあんな所も登って行ったのだ。
そのうち西の谷のほうから流れるようにガスが沸いてきた。ついには雨も降り出してきた。更にはスコールように激しい雨。
ちょうど小さな岩屋風のところがありここで雨宿り。雷鳴も聞こえ、チョッと不安。
しかしそのうち小雨になり空も明るくなりだしてきたので行動開始。
こんなに遠かったかと思うほど頂上は現れない。天気は回復傾向であるがガスは流れる。時折雲の切れ間から山も見え出す。
概ね北東の方が天気は良い。見覚えのある草原に出るとすぐに赤谷山の頂上だった。雨の止んでいる間にテント設営。
左手下には大きな雪渓が残っている。先には明日向かう白萩山、赤ハゲ、白ハゲ、池の平山?などの峰峰が連なっている。
剱岳頂上の方はガスで時折、雲の切れ間から望めるくらいである。早々に夕食を済ませ明るいうちに周囲の景色を目に焼き付けておく。
夜には雨もほとんど降ることなく、夜明けにはすっかり晴れていた。さて今日が核心部、昨日の遅れを取り戻さなければならない。
5時前には出発。少し下り気味に草薮を、朝露を払いながら進む。踏み跡も昨日に比べると薄い。
白萩のピークを過ぎ赤ハゲとのコルへ。池糠はないのかなと思ったら少し先にあったが、水はそれほどきれいと思われなかった。
初日はここに泊る予定だったが、くぼ地で 眺めもそれほど良くないようで、赤谷山のほうが正解だったのでは。
遅れも少しずつ取り戻しつつある。ハイマツの山頂の赤ハゲに着くと遠くに剱の一部が見え出してきた。
更に先へ、いくつかのピークを越え、かなり危険な岩場も通過し何とか白ハゲの山頂へ。ここは草原でチョッと一休み。
先にはハイマツで黒っぽい大窓の頭と、剱も少し見えます。左よりの草原を大窓に下り、
その後はやや急な尾根伝いに急下降して大窓へ到着。ここにもブナクラ峠や、赤谷山と同じお地蔵様がある。テントスペースもある。
右手は大窓の谷、ここへダイレクトに登ってくる人もいるらしい。向かう先は大窓の頭だがハイマツの急斜面が立ちはだかっている。
かなり登らなければならないが道は割とわかりやすい。最後の方で大きく右手に回って傾斜のゆるくなると大窓の頭はすぐだ。
しかし展望は悪い。雲の中に時折北峰が浮かんで見えるが、エーっあんな所かと不安になる。
更に岩尾根を乗り越えてコルに下ると、垂直に近い岩峰が行く手を阻む。少し手前の右手にも降りれそうだが、
確か左手に巻くハズなので大岩の下を進む。先は回りこめそうだが行き止まり。少し戻ると岩の割れ目のような所があり
中途半端なところにハーケンもある。上のほうには古いロープも見える。
ここを登るのだと、ザックをおろし、ザイルを担いで先ほどのハーケンにシュリンゲを通しここに足を掛け、力任せに
攀じ登る。意外にも手がかり、足がかりはあり、古いロープの基部までたどり着く。ここで持参のザイルを木の根に通し
一旦懸垂で下降。ザックを背負って又登りなおす。やれやれ ここからは岩尾根をほんの少し登ると北峰に着く。
次は第二の難関の南峰だ。やはりガスで時折しか見えないがかなり高い所に見える。北峰からやや左手の草地を
進み、南峰直下まで下る。少し直上し左手に回ると古いロープが2本たれているがオーバーハング気味で、この古いロープは
危険。更に進むと泥状のガレ溝があり、ここも足場が悪く傾斜もきつい。脇を少しずつ登る。左手の草付きに逃げると良いように
前情報ではあったが、かえって右手の古いロープの基部を目指した方がよさそう。
手がかりもありロープの基部まで登りつくとすぐに岩の重なりあった池の平山の南峰だ。立派な木板のプレートもある。
目の前には少し傾いたような小窓の王、八つ峰も見える。池の平小屋は?さてここからどうする。
小屋でのビールの誘惑もあるが遠回りだし、稜線がつながらない。翌日の雪渓のぼり用のアイゼンも持ってきていない。
まさかもう一度明日ここまで登り返しあくまで稜線通しにこだわるのか?少し考えたが、予定通り直接小窓のコルへ下ることとするが
ここからは道がほとんどわからない。しばらく尾根側を行くが右手は切れ落ちている。
左側はハイマツ帯だが下はどうなっているのかわからない。適当にハイマツの中を下る。
雨が又降り出してきた。ちょうど深いハイマツの中でここにもぐりこんで雨宿り。いくらかはしのげる。小窓雪渓まではまだ大分ある。
急斜面もある。このままここでビバークし、明日明るくなったら降り口を捜すかとも考えたが・・雨も上がってきたので
あちこち下方を覗き下降点を探す。太いハイマツを支点にまず一段下降、更にダケカンバで下降。
次に草付きを右手にどんどん回り込みながら下る。しかし下は崖。再び北側に戻り小尾根上のところを下る。
しかしここも下が崖のよう。かろうじて大きな岩壁の脇に降りられそうな所を見つける。ここも懸垂で下降。
ザイルの長さ目いっぱいで雪渓脇のガレ場に降りつく。小窓のコルよりも下の方だが雪渓の水が汲める。
明日の分も十分汲んでおく。雪渓の脇を上り気味に何とか小窓のコルにたどり着く。
雨宿りなどで遅くなり5時近くになっていた。ここは雪渓からの風の通り道で寒い。少し風の弱そうな草原の隅のほうにテント設営。
食欲は全くなく食事もせずにすぐに就寝。遠く稲光もしていたが天空には月も出ていた。翌朝は4時に起きる。
食欲も少し回復してきたので昨夜の予定ののレトルトカレーをつくる。これが結構美味しかった。
更にバナナ2本を追加し、昨夜の分も何とか埋め合わせした。パッキング後は5時半には小窓尾根へ登りだす。
以前逆方向に通ったときとは感じが違う。かなり登ってトラバース。その後以前には通った記憶のない雪渓のトラバース。
幅はわずかだがアイゼン無では危険だ。早朝で雪も硬い。太目の棒切れを拾い、足場を順番に作りながら進む。
ひやひやしながら渡りきり小窓王直下にたどり着く。目の前にあの池ノ谷ガリーが滝のように縦に下っている。
右手に池ノ谷乗越の頭?長次郎や本峰はガスで見えない三の窓への下りはガレ場でお助けロープなどもあるが、
幅は広くそれほど不安なく下れる。少し登り返して、三の窓へ。テントは一張りもなかった。
風が強いのかキジの匂いもなくここで一息つく。いよいよ池ノ谷がリーだ。遠くで見るほど急ではなく、
足場の良い所を拾いながらジグザグにゆっくりと登る。池ノ谷乗越に出るとその反対側は長次郎谷への道だ。
どこからか声が聞こえる。八ツ峰に取り付いているクライマーのものだろう。人影は見えない。
右手の急な岩壁を登り更に行くと大岩に囲まれた平らな所に出た。
ここを過ぎ、更に岩稜帯を行くとシュリンゲの2本ある岩棚に出てここも乗り越えていく。その後は長次郎谷側をトラバース。
長次郎の頭はどこだろう?ケルンが現れることになっているが、かなりトラバースをしたようなので懸垂のところは通過し
剱岳本峰に向かっているのかと思い、今度は尾根に出て反対側に回り込んだら、前方の崖にシュリンゲが垂れている。
えっ ここが懸垂の所か、ここは避けたいので戻りなおし尾根の反対側の岩棚を回りこむと今度は三組のシュリンゲが目に入る。
一番奥のは先ほど見えたシュリンゲだ。やはりここを降りなければならないのかとあきらめ一番近くのシュリンゲを利用することとする。
2本組だがなんとなく心配で、自分のシュリンゲを1本追加しここにザイルを掛け懸垂下降。
上から見るとそれほど高く見えなかったが、結構の距離を降りた。着地後、もうこの先危険地帯はないはず。
しかし先はガスでよく見えない岩場をどんどん登る。本峰と紛らわしいいピークも踏んだがなかなか頂上に着かない。
ガスの中に何人かの人影を見つけてやっと辿りついたと安堵する。
登山者にどこから来たのかとたずねられ、「赤谷、北方稜線」と応えると拍手で祝福してくれた。十時半と予定より早く着いた。
展望は良くないが十分に休憩する。その後祠の前で記念撮影し、下山にかかる。まっすぐ早月尾根を目指す。
剱岳はこれで2度目だが又カニの横バイは通らずじまいだ。上部は鎖も多いがこれに頼るほどでもないが安心である。
時折雲が切れ赤谷、猫叉のほうが望めるが、剱の方の岩峰はガスで隠れている。下りは結構足に応える。特に足指だ。
靴が5・10のアプローチシューズで岩場でのグリップ力は十分あるのだがつま先が弱い。恐らく爪は死んでいくのだろう。
次第にスピードは落ちる。早月小屋には二時に着いた。ここでゆっくりと休むが食欲がない
と言うより吐き気がして何も口に出来ない。ただ水を飲むのみ。後はスローペースで200メートルごとの
案内板に励まされ樹林の中を下る。最後の後1キロメートルが長く感じられ雨も降り出してきた。
時間もどんどん経ち、辺りも暗くなりだしてきた。ようやく登山口に着いて一安心。しかし次第に雨脚は強くなる。
赤谷方向の分岐にザックを置き、空身で車を取りに行く。車を回収しザックを取り込んだ直後から猛烈なスコール。
間一髪だ。ワイパーを最大にしても前が見えないくらいだ。土砂降りの中を上市に向かって走る。
次第に冒険心も満たした達成感?!のようなものが沸いてきた。
入念に前情報を仕入れてきたが、それ以上に厳しい山行だった。
まさに 試練と憧れ の剱、北方稜線だった。
試練と憧れ 剱、北方稜線 終わり。